お酒が飲めない酒屋の息子

中学の時の友達が企画した合コンに、暇つぶしに参加してみた。その子は中学の頃からひとあたりがよく、顔が広く男女ともに友達が多かったから、こんな会を主催するにはもってこいの人物だ。中学を卒業してもう6年。大学生をやっている人も働いている人も、彼女の友達の友達という人まで、男女合わせて十数人が集まった。地元は同じはずだが、私にとっては初めてみる顔ばかりで少し緊張したが、彼女が率先して場を盛り上げてくれたから、私もすぐ雰囲気に溶け込むことができた。

特に話しやすく感じ好感が持てたのが、斜め向かいに座っているお酒が飲めない酒屋の息子だ。私はお酒が大好きだから、最初の自己紹介でお酒が苦手と聞かされ、彼はないと決めつけたのだが、話してみたらとても感じが良く面白かった。お酒を飲んでいないのに、まるで酔っているかのように陽気に話し、しかも本当はシラフだから細かい点にもよく気が付く。手羽先を食べて私の手がタレで汚れると、すかさず新しいおしぼりを私の前に置いてくれたり、誰かが吸っているタバコの煙がこちらにくると、彼が素早く手ではらってまるで私をタバコの煙から守ってくれるかのようだった。

合コンなんて初めてじゃないし、本当に暇つぶしのつもりで参加したのだけど、ここまでいい感じに思えた男の子は珍しい。私の方からも話題をふるようにして、彼のことを少しずつ知るために色々な会話をした。実家は酒屋をしていること。酒屋の後継ぎなのに、お酒が飲めないことなどを面白おかしく話してくれ、その酒屋が、うちもよく利用している酒屋だったことまで判明した。灯台下暗しとはまさにこのこと。こんな人がこの地元にいるなんて、知らなかった。